KCJテニスアカデミーの目的は、子供たちのセルフイメージを高めること。
まちがいなく子供たちはセルフイメージの通りに生きていくことになるから。
◆なぜKCJでは「ボール拾い」を必要以上に重要視するのか
「コーチ!誰もいないんだから無視しなきゃ」…以前、大会に向かう途中の田舎道の赤信号で車が止まった時、引率していた小4の選手から言われたこの言葉に愕然としたことを覚えています。誰から学んだのでしょう。その子の親は塾で子供たちを指導する立場の方でした。…まさかずるがしこい生き方を良しという風に教えているのか??
「テニスがうまくなるよりボール拾いのほうが大切。1球でもたくさん拾えば1球分でも人を助けることになるでしょう」とレッスン中、何度も何度も言っていますが、人が見ていないところでボールを拾わない、また、拾っているふり!が今でもまだまだあります。我々コーチには心のこもらないボール拾いはわかります。
また同じように、ほんの4~8才くらいでありながら嘘をつく子が多いことにもショックを受けています。ラケットで4回ボールをつければいいほうだと思っていると、「6回できた!」「7回できた!」など平気なのです。ほめられるとうれしいから上乗せしてくる。さらにほめようものなら「10回できた!」「12回!」。初めからその場で「嘘はダメ」と言っては人格を否定することになるので、まずコミュニケーションを取ろうと少しの間はほめるところから入りますが、機を見て「3回までは見たけど、コーチに6回できるところを見せて」に切り替えています。
確かにほめることは大切です。が、嘘とわかっていてほめることは厳禁です。できたこと(結果)をほめるのではなくて、それに向けて(プロセス)頑張っているところをほめてほしいのです。できたこと(結果)をほめていると、できなかった子供は自己否定になるし、責められると思うと嘘をつくようになります。大切な子供のために嘘をつかなかったことや、努力している姿を一番に褒めてあげてほしいのです。
本人に「嘘をつくな」は直接的な攻撃になるので、私は嘘を見逃せないときにはこのようにしています。全員を集めて「嘘をつくと必ずバレて、悲しい、寂しい人になるから」と、私の過去に素晴らしい選手をつぶしてしまった辛い実話を話します。数字を見つけるある集中力のテストでその子は大半の小学生が3~6個のところ、5回テスト全部を10個以上見つけたのです。その時は不正していなかったのでしょうが、私が「全回10個以上ですごい!」とみんなの前で結果をほめたのがよくなかったのでしょう、次のキャンプでも同じテストをしたところ「ハイ終わり!」の後、2回ほどテーブルの下で隠すように探していたのを私は視界の片隅に見ていました。その場ではまずいと思い、後で本人に話そうと思っていたら、昼食の時いつもなら仲のいいたくさんの子供たちに囲まれ楽しくしているはずのその子が、一人ポツンと泣きそうな顔でため息ばかりついているのです。お分かりですね、誰かに現場を見られていて、知らされた他の子供たちから完全無視されたのです。キャンプ後休んでいたその子はテニス界から消えてしまいました。
嘘の中でも、人の心を癒したり元気にさせたりできる嘘なら悪くないのかもしれません。けれども小さい子供のころからの上記のような嘘や、人が見ていないところでの狡さをそのままにしておくわけにはいきません。
なぜか…これは子供たちのセルフイメージに大きく影響するからです。
つまり「人が見ていないところではボールを拾わない私はずるい人間だ」「褒められるために、怒られないために嘘をつく私は嘘つきだ」のセルフイメージに間違いなくなります。そんな自分を心から好きになれないし、自尊心も低くなっていくでしょう。さらに悪いことに、潜在意識までもが見ているので、その潜在意識の自身を成長させようという性質上「私はずるい人間だから、嘘つきだから、どこかでバランスを取るために、一度ひどい目に遭っておく必要があるな」という事らしいのです。覚せい剤、政治にかかわる裏金、内部告発などその類なのかもしれません。
子供たちのセルフイメージは親からの影響が一番大きいので、日ごろから子供に対する言葉使い、ほめ方、叱り方など十分に気を付けていただきたいと思います。子供たちのセルフイメージが高まることだけを望んでいます。勉強も運動も人生もその通りになっていくことに確信があるからです。